減価償却とは?節税メリットや会計処理を解説

この記事ではこんな悩みを解決できます■ 減価償却って何?

■ 減価償却ってどんなメリットがあるの?

■ 減価償却の会計処理方法は?
 
けーにゃん
減価償却のことを分かりやすく解説するよ!

事業を経営していく上で、資産を購入すると減価償却をしなければならない場合があります。

減価償却は決算や財務分析、キャッシュ・フローなどに影響を与えるもののひとつですが、初心者には分かりにくいものです。

この記事では初心者向けに減価償却の概要やメリット、会計処理の方法などについて解説します。


この記事の結論■ 減価償却は固定資産を一定の期間で費用処理すること

■ 減価償却のメリットは大きく分けて3つある

減価償却とは?

減価償却とは建物や機械などの固定資産の購入金額を一定の期間で費用計上する処理のことです。

簡単に言うと、買った固定資産を少しづつ経費にしていこうという制度です。

減価償却資産とは?

減価償却資産は次のような特徴があります。

■ 業務に使っている固定資産

■ 時間が経つにつれて劣化する固定資産

「減価償却資産」「非減価償却資産」の代表的なものは次の通りです。


有形減価償却資産建物、機械装置、工具器具備品、車両運搬具など
無形減価償却資産ソフトウェア、営業権など
非減価償却資産土地、棚卸資産など

なぜ一定の期間で経費処理するのか?

減価償却は資産は時間が経つにつれてその価値が減っていくという考え方にもとづいています。

例えば、1,000万円で事業用の建物などを購入したとします。

高額な資産を購入した年に全て経費にしてしまうと、その年は赤字になる可能性が高くなります。

赤字になると銀行などの融資先からの印象も良くありません。

高額な固定資産は長い期間、収益を生んでくれる資産になります。

そのため、収益と対応させる形で少しづつ経費にしていきます。

減価償却の用語

減価償却をするうえで必要となる関連用語は次の通りです。


減価償却資産減価償却の対象となる資産
非減価償却資産減価償却の対象とならない資産
減価償却費経費となる金額
取得価額減価償却資産の購入代金
耐用年数減価償却資産ごとの使用可能期間
事業の用に供した日減価償却資産を使い始めた日
減価償却累計額今までの減価償却合計額
未償却残高その資産でまだ減価償却されていない部分
未償却残高=取得価額-減価償却累計額

減価償却の計算をするときに特に重要なのが次の3点ですので理解しておきましょう。

  • 事業の用に供した日・・いつから使い始めたのか
  • 取得価額・・購入に掛かった金額(購入手数料なども含む)
  • 耐用年数・・その資産の想定される使用可能な期間

減価償却をするメリット


取得年度の損益への影響が小さくなる

取得した年度に一括で費用計上すると、その年度の利益が極端に少なく表示されます。

そのため、業績が悪化したようにみえてしまいます。

減価償却を行うことで、その資産から得られる収入と費用の対応を図ることができるので適切な損益計算ができます。

長期間にわたる節税効果がある

減価償却は「実際の支出を伴わない費用」です。

損益計算書のうえでは利益を減少させますが、実際の支出は固定資産の取得時に済んでいます。

そのため、減価償却を行うことで利益を圧縮して納める税金を少なくすることができます。

その結果、キャッシュを手元に残すことができます。

中小企業の特例

中小企業でも原則として一定期間にわたって減価償却する決まりですが、少額な資産については特例が認められています。

■ 10万円未満

「消耗品費」として一括で経費処理することができます。

■ 10万円以上20万円未満

10万円以上20万円未満の減価償却資産を対象に「一括償却資産」制度が活用できます。

「一括」とついていますが3年間の均等償却になります。

通常の減価償却の処理を行うか、一括償却資産を用いて処理を行うかを選択できます。

■ 30万円未満

青色申告者を対象として「少額減価償却資産の特例」を利用できます。

この制度は30万円未満の資産を購入した場合、その全額をその年の経費にできます。

それなりに高額な資産を買っても、通常の減価償却のように数年かけて経費処理をする必要がなくなります。

対象者 青色申告者+従業員数500人以下
対象資産取得価額30万円未満の減価償却資産
上限額300万円(事業年度が1年に満たない場合は300×月数/12)

適用要件は以下の通りです。

青色申告決算書の「減価償却費の計算」欄に次の事項を記載して確定申告書に添付して提出する必要があります。

  • 少額減価償却資産の取得価額の合計額
  • 少額減価償却資産について租税特別措置法第28条の2を適用する旨
  • 少額減価償却資産の取得価額の明細を別途保管している旨

<記載例>

国税庁HP_中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例

減価償却の会計処理

減価償却の処理を行う際に特に重要なのが次の3点です。

■ 事業の用に供した日・・いつから使い始めたのか

■ 取得価額・・購入に掛かった金額(購入手数料なども含む)

■ 耐用年数・・その資産の想定される使用可能な期間

減価償却はいつから始める?

減価償却は、「その固定資産を使い始めたときからおこなう」というルールがあります。

購入時期や支払時期は関係ありませんので注意が必要です。

例えば、固定資産を購入しても年度内に稼働しなかった時には、その年度の減価償却費として計上することはできません。

取得価額は?

固定資産の取得価額は購入代金だけではなく、手数料(仲介手数料、立退料、試運転のための雑費など)も含みます。

資産の使用可能期間は?

耐用年数とは「その資産がどれくらい使えるのか」という指標で資産ごとに異なります。

税法では固定資産の種類や構造、利用方法によって固定資産の耐用年数を規定しています。

法定耐用年数は、国税庁のページなどで確認することができます。

国税庁HP_耐用年数

たとえば、金属製の事務机の耐用年数は15年、パソコンの耐用年数は4年です。

耐用年数が15年なら、15年にわたって減価償却をしていくことになります。

減価償却の方法「定額法」と「定率法」って?

減価償却費の計算方法は大きく分けて次の二つの方法があります。

■ 定額法・・毎年一定の金額を償却する方法

■ 定率法・・毎年一定の割合で償却する方法

定額法は毎年同額(取得価額/耐用年数)を償却する計算方法です。

定率法は1年目の負担額が最も大きく、年が経過するにつれて償却額が小さくなる計算方法です。

建物や無形固定資産は定額法に限定されますが、その他の減価償却資産は定額法か定率法が選択できます。

購入時の仕訳

事業で使用するパソコン40万円を購入した時の仕訳は次の通りです。


借方貸方
(工具器具備品)400,000(現金及び預金)400,000

※ 借方の勘定科目である工具器具備品(パソコン)が40万円増加すると共に、借方の勘定科目である現金及び預金が40万円減少しています。

減価償却の仕訳

パソコンは耐用年数が4年なので、4年で償却します。

今回は定額法で行います。

<直接法>

借方貸方
(減価償却費)100,000(工具器具備品)100,000

<間接法>

借方貸方
(減価償却費)100,000(工具器具備品_減価償却累計額)100,000

※上記の償却費は1年分の償却費なので、仮に半期経過した時点で稼働した場合は償却費は半分になります。

直接法と間接法

減価償却の仕訳の方法には直接法と間接法があります。

どちらを選んでも金額に違いはありませんが、決算書への表示が異なります。

主な違いは次の通りです。

  • 直接法・・決算書にその年の償却費・固定資産の帳簿価額が表示される
  • 間接法・・決算書にその年の償却費・固定資産の取得価額・減価償却の累計額が表示される

固定資産が中古だった場合は?

固定資産を中古で購入した場合、「耐用年数」が変わります。

中古資産はそれまでに他の人に使われてきた資産なので、新品の場合より耐用年数が短くなります。

中古資産の耐用年数の算出方法は次の通りです。

  • 法定耐用年数の全部を経過した資産・・法定耐用年数の20%に相当する年数
  • 法定耐用年数の一部を経過した資産・・(法定耐用年数ー経過年数)+経過年数×20%

たとえば、法定耐用年数が30年で、経過年数が10年の中古資産の計算方法は次の通りです。

  1. 法定耐用年数から経過した年数を差し引いた年数・・30年 – 10年 = 20年
  2. 経過年数10年の20%に相当する年数・・10年 × 20% = 2年
  3. 耐用年数・・20年 + 2年 = 22年

まとめ


この記事の結論■ 減価償却は固定資産を一定の期間で費用処理すること

■ 減価償却のメリットは大きく分けて3つある

減価償却は固定資産の費用処理の方法です。

メリットも大きいですし、クラウド会計などを使えば自動化できますので、やってみましょう。