青色申告特別控除を受けたいんだけど、実際お得なの?具体的にはどうやって受けられるの?
この記事では専門家の私が初心者向けに青色申告特別控除のメリットや適用要件を解説します。
青色申告特別控除とは
青色申告特別控除とは、個人事業主を対象にした所得の控除制度です。
青色申告特別控除は適用要件を満たすことで次の金額を経費として売上から差し引くことができます。
■ 10万円
■ 55万円■ 65万円青色申告者のメリット

青色申告特別控除を受けるためには青色申告者になる必要があります。
青色申告者の一番のメリットは節税ですが、そのほかにも様々なメリットがあります。
具体的なメリットは次の通りです。
■ 所得税の節税
■ 住民税の節税■ 赤字を繰り越せる■ 家族への給与を経費にできる■ 少額減価償却資産の特例を利用できる所得税の節税
所得税の計算は、簡単に言うと所得×税率です。

※所得=収入ー経費
そのため、青色申告特別控除によって、対象となる所得が減少すれば、納める所得税が少なくなります。
例えば、所得が400万円の人であれば、青色申告特別控除(65万円)によって、65万円×20%=13万円が節税されることになります。

住民税を節税できる
住民税は、市町村民税・道府県民税の総称です。
住んでいる地域と収入によってその金額は異なりますが、前年の所得をベースに翌年の納税額が決定されます。
住民税は、所得割と均等割という2つの計算方法で算出されます。
このうち、所得割部分を節税することができます。
所得割の税率は10%(市町村民税6%+道府県民税4%)ですので、65万円×10%=6.5万円が節税されることになります。
赤字が繰り越せる
青色申告者は赤字を3年(法人なら9年)にわたって繰り越すことができます。
開業当初は、赤字になりがちです。
青色申告者となることで、繰り越した損失を翌年度以降の所得と相殺することができ、節税が可能になります。
損失が繰り越せるのは以下の所得になります。
- 事業所得
- 不動産所得
- 山林所得
- 譲渡所得
※不動産所得や譲渡所得は一部認められないものがあります。
なお、この制度を利用するためには 「申告書の第四表(損失申告用)」を事前に提出する必要があります。
「申告書の第四表(損失申告用)」 は以下のリンク先からダウンロードができます。
家族の給与を経費申請できる
次の要件を全て満たすと家族や親族への給与を経費として申請することができます。
- 「青色事業専従者給与に関する届出書」を事前に提出
- 青色申告者と生計を一にする配偶者、その他の親族であること
- その年の12月31日の時点で年齢が15歳以上であること
- 1年の内、6ヶ月を超える期間、その青色申告者の営む事業に専ら従事していること
※生計を一にするとは、日常の生活を共にすることをいいます。また、別居している場合でも生活費などを工面している場合も該当します。
事業は年間を通じて行われているので、少し手伝っただけでは経費としては認めてはくれないということです。
さらに、配偶者控除を受けることができなくなり、金額によっては、配偶者側に所得税が掛かることになります。
少額減価償却資産の特例を利用できる
減価償却とは建物や機械などの固定資産を購入した際に支払った金額を一定の期間で配分し、費用として計上する処理のことです。
減価償却って何という人は別記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
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青色申告者は「少額減価償却資産の特例」を利用できます。
この制度は、30万円未満の資産を購入した場合、その全額をその年の経費にすることができます。
高額な資産を買っても、通常の減価償却のように何年もかけて経費処理をする必要がなくなります。
対象者 | 青色申告者+従業員数500人以下 |
対象資産 | 取得価額30万円未満の減価償却資産 |
上限額 | 300万円(事業年度が1年に満たない場合は300×月数/12) |
青色申告決算書の「減価償却費の計算」欄に次の事項を記載して確定申告書に添付して提出する必要があります。
- 少額減価償却資産の取得価額の合計額
- 少額減価償却資産について租税特別措置法第28条の2を適用する旨
- 少額減価償却資産の取得価額の明細を別途保管している旨
<記載例>

青色申告特別控除を受ける手順

開業届・青色申告承認申請書の提出
青色申告特別控除を受けるためには次の書類を管轄の税務署に提出する必要があります。
- 開業届
- 青色申告承認申請書
それぞれの書類には提出期限もあるため、注意が必要です。
開業届は、開業日から1ヶ月以内の提出が原則となっています。
青色申告承認申請書は開業日から2ヶ月以内の提出が必要です。
開業届と青色申告承認申請書の提出期限や作成手順は別記事で解説していますので、ぜひ参考にしてください。
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事業所得または不動産所得を得る事業であること
事業所得もしくは不動産所得が発生する事業を営んでいる必要があります。
■ 事業所得とは?
事業所得とは所得税法では「農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業、その他の事業から生ずる所得で、不動産所得、山林所得、譲渡所得を除いたもの」と定義されています。
これではよく分かりませんが、 最高裁の判決では、事業所得とは「所得税法27条1項に規定する事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反覆継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得をいうものと解される。」と言われています。
要約すると以下の4つの要件が必要になります。
■ 自分でリスクを取っている
■ 営利を目的としている■ 反復継続している■ 規模が大きい例えば、ブログを運営している場合は次の通りです。
- 自分でリスクを取っている・・サーバー代を自分で払っている。
- 営利を目的としている・・広告収入などがある。
- 反復継続している・・長い間、運営している。これからも運営する予定がある。
- 規模が大きい・・現在の収入に対する割合
■ 不動産所得とは?
不動産所得とは所得税法では、「不動産、不動産の上に存する権利、船舶又は航空機の貸付けによる所得」と定義されています。
不動産所得が事業として認められるためには次のいずれかの要件が必要になります。
- アパートの場合は貸与可能な独立した室数が10室以上であること
- 独立家屋の場合は貸与可能な家屋が5棟以上あること
複式簿記で記帳していること
複式簿記とは1つの取引に対して、2つ以上の科目の側面から帳簿をつける方法のことをいいます。
一方、単式簿記は取引を1つの科目に絞り記録・集計する記帳法のことをいう。
例えば、単式簿記の場合、家賃や光熱費を支払ったのであれば、お金の出し入れのみを記帳します。
一方、複式簿記の場合は、現金(預金)と、家賃あるいは光熱費という、2つの科目に分けて「仕訳」をする必要があります。
発生主義で記帳していること
55万円控除を受ける場合、現金の動きがあった時点で仕訳を行う「現金主義」は認められません。
簿記の基本は「発生主義」といって、お金の流れに関係なく収入・経費として認識すべき事実が発生したら収入・経費を認識するという考え方になります。
例えば、保険料20万円(2年分)を払ったとします。
■ 現金主義では、実際に支払った20万円を経費として認識します。
■ 発生主義では、保険料2年分のうち1年分の10万円を、経費として認識します。発生主義の仕訳は次のようになります。
借方 | 貸方 |
(保険料)10万円 ※経費として認められる分 | (預金)20万円 |
(前払費用)10万円 |
複式簿記や発生主義のことを詳しく知りたい方は別記事で解説していますので、ぜひ参考にしてください。
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決められた期限内に貸借対照表と損益計算書を添付して確定申告を行うこと
貸借対照表と損益計算書は日々の記帳した取引をまとめた表になります。
- 貸借対照表・・一時点の資産・負債・純資産残高
- 損益計算書・・1年間の収支状況
これらの書類を添付し、期限内(翌年2月16日~3月15日)に確定申告をする必要があります。
この期間に申告しないと、控除が受けられないので注意が必要です。
e-Taxで申請すると10万円UP
2020年(令和2年)分の確定申告以降、e-Taxで青色申告の手続きを行えば控除額が10万円分アップします。
※e-Taxとは納税および申請・届け出を、インターネットを利用して行うシステムです。
電子申告をすることで、最大金額の65万円の控除をうけることができます。
その場合、クラウド会計で電子申告をすると、手間を少なくすることができます。
人気のクラウド会計に関するe-Taxの申告手順は、別記事で詳しく解説してますので、ぜひ参考にしてください。
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収入が55万円に満たない場合は?
事業所得や不動産所得であって、収入が55万円に満たない場合は所得の合計金額が上限となります。
例えば、収入が40万円しかなければ40万円が上限になります。

青色申告特別控除が10万円になるケース
青色申告承認申請書や開業届を提出していても、一定の要件を満たしていないと控除額が少なくなってしまうので注意が必要です。
具体的には、以下のようなケースです。
- 期限内に申告しなかった
- 現金主義で記帳した
- 複式簿記ではなく単式簿記で記帳した
- 確定申告時に貸借対照表・損益計算書を添付しなかった
まとめ
青色申告特別控除は手間の割にメリットが大きいです。
最初の設定は大変ですが、手間に見合うとおもいますのでぜひ挑戦してください。